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【Music】 SEEDA Feat. ILL-BOSSTINO, EMI MARIA / WISDOM (2009)

 

日本のラッパー、シーダによる2009年リリースのシングル。

 

最近の若者が日本語ラップをごく自然に聴いているということで若干興味を持ったので、後追いしてみました、的な。磯部涼の言を引用すれば「今からこのジャンルを聴こうと思っているひとがいるのならば、まずは00年代以降にリリースされたものを、しかもハスラー・ラップと呼ばれる作品を手に取るべきだとアドバイスしておこう。」(『ゼロ年代の音楽 壊れた十年』 2010)ということらしいです。それまでのラップは日本語をラップするためのフォーマットを形作る準備期間だったとまで言いますか。

 

というわけで、とりあえず第一人者らしいシーダを聴く。『HEAVEN』(2008)なども聴いてみましたが、トラックは重めのシリアスな雰囲気、声質は絞り出すようでいて、よく耳に届くくすぐったさもある魅力的な声。そしてラップの内容は、ハスラー(麻薬の売人)やドラッグ・ディール等に言及しつつ、そこから這い上がろうとするような内容で、面白く聴けました。個人的には「闇金ウシジマくん」の中くらいでしかお目にかからない世界であり、リアルなモノとして受け入れることは出来ませんが、シリアスな空気に若者たちが共感を覚えているということかな。叙情的な表現もありますし、感動するという気持ちも分からないではない。君たちそれを本当にリアルに受け止めているのかい、と言いたくもなりますが、かつてスヌーザーのニヒリズムに心酔していた私が批判できる立場にはいません。

 

そしてこのシングルは、半年前に引退宣言した後、撤回後のシングルになります。早いな復活が。内容は、生命礼賛みたいな印象を受けます。「次のステージ」と言えばそうかなという気がするが、聴き手もまとめて自分が面倒見るぜという気概のようなものが感じられて、いささか微笑ましくもあります。つまり、とても聴きやすくて安心させるかのような内容。キレイな旋律も出てくるし、1曲入り315円という価格設定もそうですし、ある程度「売る」という意思も感じますね(オリコン5位でそれは成功したとも言えるか)。この聴きやすさは、ちょっと緩いなーという印象も抱いてしまい、緊張感に欠けるので個人的には評価出来ませんが(ドラゴンアッシュの「Grateful Days」とか思い出してしまうのよね)、共演したイル・ボスティーノのラップが意外と心地良かったので、少し持ち直しました。とはいえ、彼の自虐っぽい視点には、少しサブカル臭を感じるのだけど、どうだろうか。というわけで、全体の空気にはそこまで共感出来ないけど、良く出来た曲であるとは思いました。それまで心酔していた人には、この曲はどう響いたのでしょうか。

 

WISDOM feat.ILL-BOSSTINO,EMI MARIA

WISDOM feat.ILL-BOSSTINO,EMI MARIA