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【Music】 Charlotte Gainsbourg / IRM (2009)

 

フランスのシンガー、シャルロット・ゲンズブールによる2009年リリースの 3rd。カバー曲を除く全曲を Beck が作詞作曲。加えて、ナイジェル・ゴッドリッチによるプロデュース。

 

彼女の作品はおろか、父親のセルジュ・ゲンズブールもよく知りません。という状態で聴きましたが、良いアルバムです。どうしてもベックに意識が行ってしまいますが、デンジャー・マウスとのせめぎ合いにあっぷあっぷしていた感のあった『モダン・ギルト』よりも、だいぶ落ち着いた音作りが出来ており、ずいぶん良くなったと思います。ごちゃごちゃとした音色(とりわけ、トライバルなビート)を、上品に洗練させつつ、気だるげでダウン気味のアレンジでゆらゆらと聴かせる内容で、彼女のささやくようなボーカルと相まって、良い雰囲気を作り出しています。プロデューサー視点になることで、自らが持つ音楽的要素を上手く調理出来るようになったということなのだろうか。また、ナイジェル・ゴッドリッチの音作りは、ひとつひとつの音を際立たせつつ、全体の雰囲気は下向きにコントロールするという感じで、ベックが持つごった煮感を矯正する役割を担っているような気がする。二人が織りなす音のバランスが面白いと思います。

 

一方で、肝心のシャルロットについては、その歌声や佇まいは魅力的とは思うけど、特別な存在という程のカリスマ性は感じられず。皆が求めていることを、斜に構えながらも最終的にはそれに応えてしまうというような、いかにも役者然とした様子が感じられるのみであり、彼女についてはよく分からないな、というのが正直なところでした。その血筋はもちろん、頭部の手術を受けたりと、ドラマ的要素は数多く持っていると思いますが、そこに聴き手がロマンを求めるか求めないかってところが、評価の分かれ目なのではないかという気もします。

 

という感じで、がっつりハマるところまではいかないけど、普通に良いアルバムだと思いました。個人的には、ナイジェル・ゴッドリッチが良い仕事してるのではないかと思います。シャルロットとベックだけでプライベート感覚の強い作品に陥りそうなところを、しっかり止めているのは彼の功績ではないかと。まあ、完全に素人の想像ですがね。

 

Irm

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