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【Music】 サニーデイ・サービス / 本日は晴天なり (2010)

 

東京の3人組バンド、サニーデイ・サービスによる2010年リリースの 8th。

 

再結成後の復活作になりますが、大きな感動がやってきたり、逆に拒否反応が出たり、といったこともなく、自然に聴けた作品でした。やはり、ソロ活動以降(とりわけ、自身でレーベルを立ち上げてから)の、曽我部恵一のキャリアがしっかりと取り込まれた、現代版サニーデイ・サービスとでも言うべき音楽になっていると思います。かつてのアナログな手触りを甦らせつつ、最後期(仲が悪かった頃?)の音楽性は微妙に避けた作りという感じですが、単純に焼き直したわけではなく、とろけるような甘い感触になっているところが、今のメロウさを持ってきているなと感じさせる。曲調はソロ名義の『LOVE CITY』などに近いものを感じつつ、シンプルであくまでも平熱な上品さを保っている曲調や、バタついてて乾いた演奏を聴くにつけ、ああサニーデイだなーとは感じるのだけど、深いところでたゆたうような、地に足の着いた音になっていると思えるので、違いは鮮明に感じます。一方でその感触は、ソロ名義でも、ソカバン名義でも出せないモノになっていることは間違いなく、サニーデイとして新作を出すことは、それだけでも意味のあったことなのだと感じられ、ただの気分で再結成したわけじゃないんだなと、正直ほっとしました。また、歌詞も同じような印象で、フィルターを通したような淡い雰囲気の詩世界に、すごく懐かしい気分になりつつも、やはり最近のプライベートな感覚が(決して表には出ていないんだけど)あって、その世界観が、自分により近い場所で見えてくるような印象があります。そのために、この作品を、自分自身の日常だとか生活だとかに、強く投影してしまう結果にもなっている。「最近はそんなに音楽聴かなくなったけど…」みたいな、一種の郷愁でもって始まるレビューを多く見かける気がするのは、そんな理由なのかもしれません。

 

と思い入れを語ってはみましたが、正直に申し上げれば、今作はそこまで出来の良い作品とは言えないと思います。シンプルと言えば聞こえはいいけど、全体的にメリハリに欠けていて、特に中盤があっさりしすぎているとも思う。後半の、ソロっぽい作品がじっくり聴かせる内容だったというのも(一番好きな曲は M-8「Dead Flowers」です)、少し物足りなさを覚える。しかし個人的には、それでもいい作品だなと、しみじみとした気分になりながら、聴いていた。つまり、変わっていないことと、変わっていることが、両方ともあって、その絶妙なバランスに、私は感動を覚えているのだと(余談ですが、「SNOOZER #079」に久しぶりに登場した、加藤亮太のレビューは泣けました)。逆に、変わっていないことを期待していたり、昔を知らないが故に変わっていることを分からないと、そこまで響いてこないかもしれません。だから、前途明るい若人は「オッサンの懐古趣味全開音楽w」とか言ってくれていいと思う。「この良さが分かるには10年早いわクソガキw」と言い返せるようになりたい。

 

本日は晴天なり

本日は晴天なり