【Art / Movie】 拡散によって完成するふたりのコレクション - ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの
ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの
ごく普通の夫婦ながら世界有数の現代美術コレクションを築いた、ボーゲル夫妻のドキュメンタリー2作目。今作は、コレクションを全米50州の美術館に寄贈するというプロジェクト、「Vogel 50x50」を中心に描いた内容です。
最初、どうしてコレクションを拡散させてしまうのだろう? という疑問や、企画者の自己満足的なコンセプト先行のイベントなのかなぁというモヤモヤした気持ちを抱いていたのですが(実際、ハーブは当初このプロジェクトに反対していたそうですし、不快感を示して一時期疎遠になってしまったアーティストもいたのですが)、映画を見てその疑念は払拭されました。
前作では、自分たちの部屋に置ききれなくなった美術品を、ナショナル・ギャラリーにどさっと寄贈したのですが、結局そこでもほとんどの作品は倉庫にしまわれたままで、陽の目を見ることがなかったのです。
そのコレクションを、多くの人に見せようという思いからはじまったプロジェクト。
実際に、各州に寄贈された作品が展示され、人々の目にふれられているシーンでは、なぜかうれしさがこみ上げてきます。
受け取り方はさまざまで、ふたりのアパートメントを再現して展示しようと意欲たっぷりに取り組む美術館もあれば、資金繰りが悪化して閉館してしまう美術館もあるし、いつまでもサイトに写真をアップせずあまり乗り気でないように見える美術館もある。現代美術ですから、抽象的だったり、いっけん美術作品とは思えないような作品に首をかしげる人もたくさんいますし、子どもたちが目をキラキラさせながら「無題」の作品に思いおもいのタイトルをつけたりもする。いろんな反応も含めて、このプロジェクトの意図なんだろうなと思いながら、見てました。
映画の終わり。ハーブは2012年に亡くなり、ドロシーは収集の終了を宣言します。そのシーンはとても悲しいと同時に、美術品収集がまさに夫婦の共同作業であったことを象徴している。最後のシーンにはほんとうに胸を打たれました。素晴らしかったです。
映画『ハーブアンドドロシー ふたりからの贈りもの』公式サイト
以下は前作の DVD。