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【Music】 Spoon / Transference (2010)

 

テキサスの4人組バンド、スプーンによる2010年リリースの 7th。

 

前作は丁寧に作り上げた楽曲をシンプルかつじっくりと聴かせる素晴らしい内容でしたが、今作はうって変わって、アレンジ過剰な作品へと変貌していた。しかしそのアレンジは何がしたいのかさっぱり分からず、手習いの域を越えないシロモノばかりでげんなり。音響的に色々やってたりもしますが、いずれも中途半端で、変なエフェクトが入る度にイラッときます。フリークフォークの出来損ないみたい。ヘッドフォンで聴くと音のトビ具合が面白いとか、いつの時代の話だよあんた。ついでに、楽曲の精度も明らかに低落傾向で、アレンジで誤魔化したような曲が多いです。相変わらず骨組みはいい曲も、あるにはあるけど、珍妙な音の後ろに隠れてしまい、ほとんど響いてこない。結局印象に残った曲は、楽曲そのものをしっかりと際立たせる「ために」アレンジを用いている「Out Go the Lights」や「Got Nuffin」といった、「アレンジありきではない」終盤の楽曲ばかり。そこに至るまでに、すっかり気分も萎えてしまいます…。

 

というわけで、自分達の持ち味を壊してしまったような、残念極まりない作品でした。この方向性を突き詰めれば、やがて良作をモノにするかもしれませんが、いずれにしても、これ単品での評価は無理。とはいえ、ブリット・ダニエル自身、この作品を「これまでのアルバムよりも若干グロテスクかつ風変わりな作品」と評しているように、彼ら自身の方向性は明確だと思う。問題は、それを取り上げる側にある。身銭を切って買えだの、アーティストに還元しろだの言う前に、こういった特殊な作品を、傑作だの新しいスタンダードだのと不必要なまでに持ち上げる、嘘と欺瞞にまみれた姿勢こそを、まずは正していただきたいと切に願います。

 

Transference

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