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読書、音楽、ゲームなど、エンターテインメント系の趣味について書きます。

【TRPG】 インセイン シナリオ 「人面疽」

 

先日、インセインのマスターをやりました。

その時に使用した、自作シナリオを公開します。

ワールドセッティングは、「怪異蠢く帝都東京」。1920~30年代の東京を舞台にした、オリジナルの舞台です。つまり、クトゥルフと帝国」のパクリです。オリジナルじゃない。

他舞台への転用は出来なくもないですが、無声映画がキーになっているので、年代(1920年代)は変えない方がよいと思います。

元ネタは、谷崎潤一郎の同名作品です。紀田順一郎編「日本怪奇小説傑作集1」などに収録。ちなみに、このアンソロジーには他にもシナリオのネタがごろごろ転がっておりますぞ。

では本編です。

 

人面疽

基本情報

  • シナリオタイプ:協力型
  • プレイヤー人数:4名
  • サイクル:3
  • ハンドアウト:13枚(9枚+PC分4枚)
  • ワールドセッティング:怪異蠢く帝都東京(オリジナル)
  • 狂気:指定なし

 

概要

新進気鋭の女優、歌川百合枝は、自分が出演している映画が、場末の映画館で上映されているという噂を耳にした。

しかし奇妙なことに、自分自身がその映画に出演した記憶がないのだ。

PCたちは、彼女からの依頼やそれぞれの動機をもとに、映画についての調査を行う。

 

その映画は実は、彼女の過去を告発する内容であった。

かつて彼女を想い、彼女の手にかかって命を失った人物が、怨念によって深海より黄泉返り、これまた彼女に言い寄っていた若手俳優を利用して、映画を作りあげたのだ。

その映画は、観る者を狂気へと陥れると同時に、最後まで観てしまった者はやがて怨霊にとりつかれてしまうという、恐ろしい映画であった…。

 

ハンドアウト (PC)

PC1(推奨:なし)

あなたは、知り合いの女優、歌川百合枝から相談を受けた。

曰く、自分が主演する奇妙な映画が、東京の場末の映画館で上映されているらしい。

あなたの【使命】は、その映画を見つけ出すことである。

【秘密】

ショック:全員

あなたは、歌川百合枝の婚約者である、宮本龍一にひそかな想いを寄せている。

あなたの【本当の使命】は、宮本龍一を幸せにすることである。

なお、あなたは現在、不治の病に侵されており、余命いくばくもない。

そのため、あなた自身が宮本と結ばれることは、必ずしも彼にとって幸せなことではないだろう。

 

PC2(推奨:作家・記者など物書き系)

あなたは、映画会社の知り合いから相談を受けた。

会社が把握していない謎の映画が、東京の場末の映画館で上映されているらしい。

あなたの【使命】は、その映画を見つけ出すことである。

【秘密】

ショック:なし

あなたは、その映画に心当たりがある。

うわさに聞く話の筋が、以前、あなたが書いた脚本に似ている気がするのだ。

しかしなぜか、誰の依頼で書いたのか、どんな結末だったのか、覚えていない。

あなたの【本当の使命】は、映画の結末を知ることである。

 

PC3(推奨:なし)

あなたは、映画好きの映画狂である。

最近、新しい映画の噂を耳にした。

ハリウッド帰りの女優、歌川百合枝が主演する奇妙な映画が、東京の場末の映画館で上映されているらしい。

あなたの【使命】は、その映画を見つけ出すことである。

【秘密】

ショック:なし

あなたは、米国の映画会社のエージェントであり、日本の映画フィルムを海外に輸出することで金銭を得ている。

あなたの【本当の使命】は、その映画のフィルムを映画会社に引き渡すことである。

 

PC4(推奨:なし)

あなたは、新しいモノには目がないハイカラなアーリーアダプターである。

最近、面白そうな噂を耳にした。

新進気鋭の女優、歌川百合枝が主演する奇妙な映画が、東京の場末の映画館で上映されているらしい。

あなたの【使命】は、その映画を見つけ出すことである。

【秘密】

ショック:全員

あなたはつい先日、大事な人(男性)を失った。

勤めていた芸能事務所のビルの屋上から飛び降りたのだ。

「あの映画…」「顔が!」という、殴り書きのような書き置きを残して…。

あなたの【本当の使命】は、彼を死へと追いやった人物に復讐することである。

※「大事な人」との関係は、親友や恋人等、自由に設定してください。

 

ハンドアウト (PC) 補足

PCの【秘密】を補足します(ルール的な解釈など)。

PC1は、「宮本龍一」の【秘密】と、「協力者」の【秘密】を見ていれば達成可能です。「余命いくばくもない」件は、宮本龍一と感情を結びに行ったりしてシナリオが進まないことを懸念しての記載です。

PC2は、「映画:エンディング」の【秘密】を見ていれば達成可能です。他PCに比べて達成しやすいのですが、この【秘密】はクライマックスでキツい状況になるので、まあいいじゃないか。「脚本を書いた記憶」云々というのは、【秘密】を見た後でもシナリオに参加してくれるように含みを持たせる意図があります。

PC3は、クライマックスフェイズ終了時に、プライズ「映画のフィルム」を所持していれば達成可能です。他のキャラが持っていると、あれこれ面白い動きをしてくれると思います。また、クライマックスの戦闘で敗北した場合は、怪異がプライズを奪い取ることをほのめかしてもいいかもしれません。

PC4は、「映画:青年」の【秘密】を見つつ、クライマックスで怪異を撃退すれば達成可能です。この【秘密】を見ていないと、自分の【秘密】と今回の事件が完全には結びつきません(外から見るとバレバレですが)。「芸能事務所」のキーワードに気付いてくれるかがキモです(実際のプレイでは気付いてくれなかった…)。

 

プライズ

映画のフィルム

映画のフィルム。

「映画:~」に対して調査判定を行う場合、このプライズを所持してるキャラクターがシーンに登場している必要がある。

登場しているキャラクター間での受け渡しは自由(ドラマシーンのみ)。

【秘密】

なし。

 

シナリオハンドアウト

メインフェイズ開始時のハンドアウトは、「映画」、「歌川百合枝」、「宮本龍一」です。

映画

歌川百合枝が出演しているという映画。

詳細はひみつ。

【秘密】

ショック:なし

ホラースケープ:2「街中」。

映画について調べたが、すべての情報がどこか漠然としていて、具体的な情報は何ひとつ手に入らなかった。

この【秘密】を調査したキャラクターは、「お守り」「武器」「鎮痛剤」の中から好きなアイテムを1つ手に入れることが出来る。

(このアイテムは、情報共有では手に入れることが出来ない)

 

歌川百合枝

新進気鋭の若手女優。

何作か映画に出演しており、評判もよい。

最近、若手実業家である、宮本龍一との婚約を発表した。

【秘密】

ショック:なし

拡散情報

彼女は宮本との結婚について、懸念している事がある。

彼女は、以前映画で共演したことのある俳優、嘉納伝助に言い寄られており、迷惑していた。

「嘉納伝助」のハンドアウトをオープンする。

彼女は、嘉納に対しては何の想いも抱いていない。

 

宮本龍一

若手イケメン実業家。

貿易によって財をなし、若くして飛ぶ鳥を落とす勢い。

最近、女優である「歌川百合枝」との婚約を発表した。

【秘密】

ショック:なし

彼は、百合枝との結婚について、懸念している事がある。

百合枝の過去(女優になる前に、色々と悪どいことをやってのし上がってきた)を告発する手紙を受け取ったのだ。

手紙が匿名であったこともあり、デマだと信じているが、疑念は払拭しておきたいと想っている。

彼は、百合枝との結婚を心から望んでいるが、万が一、百合枝の過去に何らかの問題があった場合は、関係を解消することがお互いにとっての幸せだと考えている。

 

嘉納伝助

売り出し中の若手俳優。

最近、仕事をサボっており、連絡が取れない状態になっているらしい。

彼の【居所】は、調査判定では取得することが出来ない。

【秘密】

ショック:全員

嘉納の家を訪れたキャラクターは、嘉納の死体を発見する。

死体の傍らには、映画のフィルムが転がっている。

この【秘密】を見たキャラクターは、『怪異』分野の《死》で恐怖判定を行う。

同じシーンに登場していたキャラクターも同様に判定を行う(この場合、情報共有は発生しない)。

また、この【秘密】を調査判定により取得したキャラクターは、プライズ「映画のフィルム」を入手する。

 

映画:菖蒲太夫

映画の主役。トップの花魁である。

歌川百合枝が演じていると思われる。

【秘密】

ショック:なし

拡散情報。

菖蒲太夫の物語は、歌川百合枝の過去と重なっている。

百合枝はかつて花街で働いており、そこで芸能事務所のスカウトに身請けをされ、映画界に飛び込んだのだった。

身請けの際は夜逃げ同然で逃げ出しており、誰かの協力がなければ不可能だったと言われている。

ハンドアウト「協力者」を公開する。

 

映画:青年

菖蒲太夫の恋人役。イケメン。

ある芸能事務所のスカウトマンにそっくりである。

【秘密】

ショック:PC4

現実の彼は、この映画を見ている。

それが原因で気が狂い、ビルから身を投げて死んでしまった。

死の間際、「聞こえる…、あの笑い声が!」と叫んでいたという。

 

映画:乞食

醜い容貌をした乞食。菖蒲太夫の駆け落ちを手引きした挙げ句、本人に殺されてしまう不幸な人。

嘉納伝助が演じていると思われる。

嘉納伝助はお世辞にも演技に定評があるとは言えなかったが、この作品の演技は鬼気迫るものがあり、特に菖蒲太夫の膝頭の腫れ物として登場してからは、まるで別人が乗り移ったかのような演技である。

【秘密】

ショック:全員

この【秘密】を見たあなたは、乞食が海に落とされる殺害シーンは、撮影による演技ではなく、本当に殺人が行われていることを直感的に悟った。

であれば、その後に出てくる腫れ物は、常識的に考えれば先に撮影しておいたのだと思われるが、なぜかあなたはどうしてもそうは思えない…。

この【秘密】を見たキャラクターは、『怪異』分野の《深海》で恐怖判定を行う。

 

協力者

歌川百合枝が夜逃げするにあたって、手助けをしたと思われる人物。

詳細はひみつ。

彼の【居所】は、調査判定では取得することができない。

【秘密】

ショック:PC1

拡散情報

彼は梶原という社会運動家である。

百合枝に好意を抱いており、夜逃げの手助けをしたが、百合枝にだまされて命を落としてしまった。

彼の家を訪れることが可能となる。

※訪問のシーンはマスターシーン扱いとなります。

 

映画:エンディング

映画のエンディング。

※この【秘密】は、調査判定を行うシーンに登場しているキャラクター全員が見ることが出来ます。またこのシーンは、シーンプレイヤーが登場を望まない場合であっても、登場することが可能です。

【秘密】

ショック:全員

映画のラストシーンは、人面疽によってついに「花魁」は気が狂った挙げ句、「青年」を殺し、自分もまたナイフで喉をつき、絶命する、という凄惨なものであった。

彼女が倒れたところで、膝が露わになり、人面疽がアップになり、壮絶な笑みを浮かべる…。

その瞬間、小さな笑い声がどこからか聞こえてくる事に気づく。

※当時の映画は無声映画です。

周囲を見回したが、声を発しているような人物は見あたらない。

まるで、スクリーンの人面疽が笑い声をあげているようだ…。

そして、驚きのあまり、スクリーンから眼を離すことができないあなたは、その人面疽と眼が合ってしまった…!

この【秘密】を見たキャラクターは、『情動』分野の《笑い》で恐怖判定を行う。

 

マスターシーン

映画の試写

プライズ「映画のフィルム」を最初に入手した次のシーンは、マスターシーンとなる。

歌川百合枝に映画を一緒に観てほしいと依頼される。浅草の映画館の試写室を借りているらしい。

百合枝の誘いを断ってシーンに登場しないためには、『情動』分野のランダムな特技で抵抗が必要。

 

映画のストーリー

歌川百合枝が演じる、花魁の「菖蒲太夫」が、「青年」と恋におち、駆け落ちを計画する。

駆け落ちに際して、かねてから花魁のことを快く想っていた「乞食」に、手引きを依頼。

「乞食」はその見返りに、「花魁」との関係を要求するも、「花魁」と「青年」の罠にかかり、命を落としてしまう(海へと落とされ、溺死する)。

「乞食」は、最後にこう言い残す。

「私が死んだら、私の執拗な妄念は、私の醜い面影は、あなたの肉の中に食い入って、一生お側に付きまとっているでしょう。その時になって、どんなに後悔なすっても及びませぬぞ!」

無事に駆け落ちを果たした「花魁」と「青年」だったが、「乞食」の死後、「花魁」の膝頭に人間の顔に似た腫物が浮かび上がり、「花魁」をさまざまな困難に陥れる。その腫れ物は、「乞食」の顔にそっくりであった…。

 

ここで百合枝は。気分が悪くなり退席する。

去り際に、やはりこの映画に出演した覚えはないことを訴える。

映画の試写は、ここで中断する。

 

ハンドアウト「映画:菖蒲太夫」「映画:青年」「映画:乞食」「映画:エンディング」を公開する。

 

梶原の家

梶原の家を訪れるシーン。

周囲から隔絶された家。

雑草が無造作に生い茂り、外壁もぼろぼろ。

海からは遠く離れているはずだが、どことなく磯の香りが漂っている。

中に入ると、磯の香りはより強烈になり、吐き気をもよおすほどの悪臭である。

家の中を探す場合

  • 『知覚』分野の《芸術》で判定すると、映画のフィルムの切れ端が見つかる。「焼き込み」を行っていたようだが、この場にその機械は存在しない。「お守り」を1つ入手する。
  • 『知識』分野の《民俗学》で判定すると、とある地方に伝わる「憑依」の儀式についてのメモが見つかる。このメモには、「憑依」を打ち消す方法も書かれている。この打ち消す方法は、【情報】として扱う。
  • ゾーキングを行うと、PC2が書いたと思しき脚本や、歌川百合枝の写真、手紙の下書き(百合枝のスキャンダルについて書かれている)が見つかる。

※判定は、PCひとりにつき1回のみ。失敗した調査などについて再度行う場合は、ドラマシーンによる補助判定扱いとすること。

また、シーンに登場しているキャラクターのうち、【狂気】の数が最も少ないキャラクターは、ホラースケープ:6「情報」に遭遇する。

 

百合枝が…

最後のサイクルが終わったところで挿入されるシーン。

百合枝が「映画:エンディング」を見てしまう。

彼女が膝の痛みに気づいて着物の裾をめくると、そこには彼女をあざ笑うかのような笑みを浮かべた人面疽が…!

 

クライマックスフェイズ

人面疽が乗り移った百合枝が、PCたちに襲いかかってくる。

百合枝は、野太い男のような叫び声をあげる。この世のものとは思えないその表情は、膝頭の人面疽そのものだ…!

『怪異』分野の《終末》で恐怖判定を行う。

 

レギュレーション

「映画:エンディング」の【秘密】を見たキャラクターは、人面疽に「憑依」される可能性がある。各ラウンドの最初に、誰が「憑依」されるかをランダムに決定する(百合枝は対象外)。この「憑依」には抵抗できない。

ただし、協力者の家で「憑依」を打ち消す方法(【情報】)持っているキャラクターは、『情動』分野の《笑い》で判定することで、「憑依」に抵抗することが出来る。抵抗された場合、人面疽は百合枝に「憑依」する(百合枝は抵抗できない)。この時、百合枝が戦闘不能になっている場合は、誰にも「憑依」しない。

人面疽を攻撃した際、攻撃判定に失敗すると、「憑依」されているキャラクターに当たる可能性がある。そのキャラクターは回避判定をすること。また、攻撃判定にファンブルすると「憑依」されているキャラクターに必ず当たる。

人面疽が乗り移ったキャラクターは、通常の行動を取ることが出来るが、人面疽を攻撃する場合は、攻撃判定にマイナス2の修正がかかる。攻撃に失敗した場合の処理は同じ。

百合枝が乗り移られていた場合は、彼女は錯乱しているため通常の行動を取ることが出来ず、PCを【基本攻撃】で攻撃する。

「憑依」されているキャラクターは、ラウンドの終了時に生命点と正気度がそれぞれ2点ずつ減少する。この減少は軽減できない。

「憑依」されているキャラクターは、戦闘から自発的な脱落をすることができない。

「憑依」されているキャラクターの生命力が0になった場合、「憑依」は解かれ、次ラウンド以降は同じ処理を行う。

なお、自発的な脱落をしようとするPCが「映画:エンディング」の【秘密】を見ていた場合は、本当に逃げていいのかい? と忠告しよう(ルール的には特に何も制約はないし、それはそれで次回への引きになりそうだが)。

 

人面疽のデータ

好奇心:情動、特技:怒り、笑い、芸術、魔術

生命力:12

【基本攻撃】:怒り

【憑依】:笑い

 

百合枝のデータ

好奇心:情動、特技:刺す、官能、他

生命力:6

【基本攻撃】:刺す

 

エンディング

各人の【本当の使命】を明かしつつ、適当に演出します。

なお、PC3が【本当の使命】を達成している場合、最後に映画のフィルムを受け取った、米国映画会社の社員が、「早速、このフィルムを複製して、全米で公開するよ!」とさわやかに言い放つとリングみたいで面白いです。

 

おまけ

映画館シーン表

「映画:~」を調査する際にご利用ください。

1

足元を何かがなでるように通り過ぎた、ような気がする。

虫か? 動物か? それとも…。

2

耳元でささやくような声が聞こえた。

振り返ったが誰もいない…。

3

椅子がドンと軽く揺れた。

後ろの席の人が蹴ったのかと振り向くが、誰も座っていない…。

4

つんと鼻をつく匂いが漂ってくる。

甘いような、深いようなとろんとした匂いに心地よくなってしまい…。

5

映画のスクリーンがとても近く感じられる。

こちらから手を差し出せば、触れてしまいそう。

スクリーンから手が伸びているのか、我々がスクリーンの中に取り込まれているのか…。

6

客席の隅の方で、カメラを担いだ男がクネクネと踊っている。

暗くてよく見えないが、カメラが顔そのものになっているように見える…。

 

おしまい。

 

 

 

日本怪奇小説傑作集1 (創元推理文庫)

日本怪奇小説傑作集1 (創元推理文庫)